性差のない活躍推進に取り組む男性8割の企業が男性育休取得率100%達成!プロジェクトの裏側と当事者の生の声をお届け
出産により、女性は必然的に休業を余儀なくされます。
当然、育児休業を取得する割合は男性よりも高くなり、子育てに携わる時間も女性の方が多い…それが日本の子育ての現状です。
平成28年(2016年)4月に女性活躍推進法が施行されましたが、目に見える形で女性が活躍する世の中に変わったとは言い切れない状況です。
そういった現状を踏まえ、女性の活躍を推進するためには、「男女問わず育児ができる社会」を目指すことが必要と考えられました。
そこで、令和3年(2021年)の育児・介護休業法改正、令和4年4月1日からの段階的に施行に至ります。
- 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 【令和4年10月1日施行】
- 育児休業の分割取得 【令和4年10月1日施行】
育児休業の取得の状況の公表の義務付け 【令和5年4月1日施行】 - 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 【令和4年4月1日施行】
参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
上記の改正をうけ、企業には、男女共に育児休業を取得しやすい雇用環境の整備がこれまで以上に求められています。
厚生労働省が行っている令和3年度(2021年)雇用均等基本調査では、女性の育休取得率が85.1%なのに対し、男性の育休取得率は13.97%であるということが明らかになっています。
如何に男性の取得率が低いのかわかりますよね。
「男女問わず育児ができる社会」には、男性の育児参加が不可欠ですが、企業の体制を変えずして、男性の育休取得率が向上することは難しいのではないでしょうか?
このような状況の中、2019年から男性育休取得率向上に力を入れ、活動開始からわずか3年で男性の育休取得率100%を達成した企業様に出会いました。
高知県高知市に本社を構える建設機械メーカー、株式会社技研製作所では2018年度までは0%だった男性の育休取得率を、2019年度に30%、2020年度に61.5%と引き上げ、2021年度には100%に達しています。
数日〜1週間程度の短期間の休暇ではなく、3ヶ月以上の長期取得に成功された同社ではどのような対策がなされたのか?
「イクメン企業アワード2020」でグランプリを受賞するほど成功した改革について、お話を伺いました。
今回のインタビューでは、プロジェクトメンバーの方だけでなく、
- 実際に育休を取得された男性社員
- その男性社員の上司
- 育休を取得された男性社員の奥様
に、様々な視点で男性の育児休業取得について伺いました。
経験者のよりリアルな声に触れていただければと思います。
育児は他人事ではないと実感できました!
まずは、実際に育休を取得された中田さんにお話を伺います。
中田さんは、入社後まもなく育休を取得されました。
最初は収入面、業務に対する不安が大きかったそうです。
ですが、会社の後押しもあり、2022年4月〜6月までの3ヶ月間育休を取得されました。
中田 海雲さん
事業課
育休制度に関する率直な意見を聞かせてください
まずは会社に対して、このような制度を設けていただき感謝しています。
実は、育休を取る前は他人事のように感じていました。
しかし会社の制度として育休を推進してくれたことで、実際育休を取得することができ、取り入れるべき制度であると実感しました。
会社に後押ししてもらえることがどれだけありがたいことかということを感じました。
育休中はどのように過ごされていましたか?
正直、育児というものを夫婦ともに軽くみていました。
育児について勉強し、学びを深めながらの毎日でした。
おむつ替えやお風呂に入れるなど、1人ではできないことがどうしても出てくるので、そこに対して夫婦で知識を深め協力しました。
仕事復帰後は、どうしても育休中のように時間が取れないので、復帰後に育休中の経験を生かして私自身にできる育児とは何か?妻と話ながら過ごしていました。
育休取得の有無で育児に対する関わりに違いがあったと思いますか?
育児の何が大変なのか、育児の全ての面を見れていなかったのではないかと感じます。
育休を経験したことによって、赤ちゃんが寝ている時など、常に気を張っていないといけない状況を体験しました。
生まれてから生後3ヶ月までの育児を身をもって体験したので、育児に対する考えは変わりました。
奥様と試行錯誤しながらいろんなことを学びながら育児を行ってこられたと思いますが、夫婦関係に変化などはありましたか?
四六時中妻と一緒にいることが今までなかったので、喧嘩などは多少はありましたが、振り返ると良い喧嘩だったと思います。
育児に対してしっかりと時間をとって話し合えたので、お互いのことをより知ることができ、育児に対しての真剣さや信頼感、責任感をお互い再認識することができました。
夫婦関係はすごく良好です。
育休中に収入が減ることへの不満や戸惑いはありましたか?
不安はゼロではありませんでした。
会社から収入シュミレーションをいただき、育休期間中(3ヶ月間)に入るお金を計算できたので、それを踏まえて、夫婦間で使えるお金等の工面ができるという判断ができたのは良かったです。
最終的にそこまで大きな不安は感じませんでした。
復帰後への不安はありましたか?
すごくありました。一番不安を感じた部分です。家族で話し合いもしました。
私自身入社して間もない立場だったこと、新しい仕事も任されて、ここで遅れをとるわけにはいかないという気持ちが強く、不安は本当に大きかったです。
最初は育休取得に消極的な部分もありましたが、上司と話すなかで不安を払拭することができ、育休をとることを決意しました。
実際、3ヶ月育休を取られている期間は、完全に家庭に入っているような状態でしたか?仕事関係の連絡はありましたか?
上司や先輩から仕事に関する連絡は全く来ませんでした!
不安を感じた時に、自分からメールを送ることはありました(笑)。
これから育休を取りたいと考えている男性へメッセージをお願いします
実際育休を取ってみて感じたのは、男性も育休が取れる状況にあるのであれば、取るべき制度だと感じました。
会社や先輩からのフォローがなければ消極的になってしまいがちですが、実際取ってみて育児について分かることがあります。
個人的には、取るべきじゃなかったと感じる人はいないんじゃないかと感じています。
ぜひ、取得して子供や奥さんと過ごす時間をもってみてください。
中田さんありがとうございました。
充実した育休を過ごされた様子が伺えました。
育休取得後の部下の様子からも今後も取得100%を継続させたい
続いて、中田さんの上司の中越さんにお話を伺います。
中越さんは、お二人の部下が育休を取得され、環境の変化を経験されたそうです。
中越 智大さん
事業課 課長
育休取得100%の取り組みについてどのようにお考えでしょうか?
これは、
- 育休取得者
- 会社サイド
2つの目線があると思うのですが、会社にとって間違いなく良い取り組みだと思うので、今後も取得100%と言うのは継続していくべきだと考えています。
育休を実際にとられた部下への評価は取得前と取得後で変化しましたか?
評価自体は変わらないですし、変わってはいけないという認識です。
それを大前提としたうえで、実際には
- 周りのメンバーに協力してもらった
- 休んでいた間の分、周りに早く仕事を追いつかなければいけない
という意識があるのか、育休取得前よりも精力的に頑張って取り組んでもらっているように感じます。
男性育休取得を進めるにあたって障害になったことがあれば教えてください
いくつかあります。
育休を取得するのは20代や30代の若手社員が多いため、収入面が一番ネックになるのではと考えました。
休め休めと言ったところで「休みたいけど収入がない」という人が結構いるのではないかと予想していました。
しかし、プロジェクトチームの方にいろいろ尽力してもらい、補助制度もでき、収入面での不安はクリアされたのではないかと考えています。
その他には、パートナーがずっと里帰りする方も中にはいるのではないかというのも想像していたので、そういった時にどうするのかということも考えていました。
逆に仕事の業務配分については大きな障害はないと感じていました。
弊社は、コロナが流行する前は、語学留学などを行っていて、しばらくの間、人が抜けることをすでに経験していたこともあり、業務面での大きな支障はありませんでした。
会社の考え方として「あえて人が抜けることで属人化を防ぐ」「組織力を強化する」などの狙いもあり、実際に属人化が薄れ、仕事も効率化が図れてきていると実感しています。
また、育休取得100%を目指すこの機会に、組織や業務の本来あるべき姿をさらに追求しないといけないと感じました。
育休を取得後に復帰した部下への周りの反応はいかがでしょうか?
私の部署では、中田君の前に育休を取得した課員がチームリーダー的な存在でした。
チームリーダーが育休に入る前は、周りの他の課員は不安がっているなと見て取れたので、復帰したときの安堵感、ホッとしたというのをすごく感じました。
中田君に関しては、周りのメンバーも一度チームの大黒柱が抜ける経験をしていたため、戸惑いは少なく感じました。
チームリーダーが先に取ってくれたので、後輩や若手社員も育休を取得するのが当たり前なんだという認識につながったと感じています。
20代や新婚さんが多い部署なので、次は自分だという認識もあり、経験者に感想だったりアドバイスを求める会話が普通に聞こえるようになりました。
上司の立場で育休制度は何%位でオススメできるとお考えでしょうか?
100%勧めるべきだと考えています。
会社の規模や業種によって必ずしも導入できるとは限りませんが、取れるのであれば100%勧めたいです。
これから育休制度を充実させたいと考えている他社に上司の立場でアドバイスをいただけますか?
先ほど中田君が言っていた通り、育休を取る本人はさまざまな面で不安を抱えているものです。
それを「当たり前に取っていいんだ」と思える環境作りをしなければいけません。
また、思っているだけではなく、当社のプロジェクトチームがやってくれたように、社内規定を整えたり、補助制度を整備したり、説明会を開催することも大切です。
そうすることで、上司の意識も変わってくるでしょうし、こういうものを活用しなければいけないんだという認識にもつながってくるはずです。
会社全体で経営層から「育休取得が当たり前」なマインドになってもらわないとなかなか難しいので、これから推進を考えている企業の方々は、トップダウンでスタートするのが一番の近道ではないでしょうか。
当社も最初はトップダウンでスタートしたことで、スムーズに推進できたと感じています。
中越さんありがとうございました。
上司から快く背中を押してもらえる環境、とても羨ましいですね!
育休を取得する人の不安軽減とスムーズな復帰のためには、上司の理解は不可欠だと感じました。
女性のキャリアを守るという意味でも旦那様にも積極的に育休をとってもらえると嬉しいです
続いて、旦那様が育休を取得された島村さんにお話を伺います。
島村さんはご夫婦とも技研製作所の社員であり、出産時にはご夫婦で育休を取得されています。
今回は、妻の立場で育休中のご主人の様子やサポート内容について話してくださいました。
育休プロジェクト制度についての率直な感想をお願いします
男性女性関係なく育児休業を当たり前のように長期間取得できる環境は本当にありがたいと感じてます。
実は、私の夫は中越・中田と同じ部署でそれぞれ上司・後輩にあたります。
今回育休取得を快諾していただき、チームリーダー的な形で業務をしていた夫がいなくても仕事を回せるように業務分担を考えてくださった点については本当にありがたく、感謝してます。
育休終了後も、子供が病気に罹るたびに、夫と交代しながら頻繁に休みをもらっていますが、そういうことについても理解していただいてることに、夫婦共々感謝しています。
業務の成果でお返ししたいという気持ちでいっぱいです。
どのような産後を過ごされましたか?
私の場合、里帰り出産をして娘が5ヶ月になる時に上京しました。
上京後、夫が3ヶ月育休を取得しました。
コロナ禍での上京だったので、出来るだけ外出せず、人にも会わず、行政によるさまざまな子育てサポートなどの利用も全て控えていました。
なので、夫が育休を取得してくれたことで、相談相手、話し相手がいて心強かったです。
夫がいなかったら誰とも喋ることなく、精神的にもかなり参っていたと思います。
短いですが、ひとりの時間も確保できました。
散歩に出かけたり、ボーっとする時間も作れて嬉しかったです。
産後不安定になる女性が多いと思いますが、私の場合は、精神的にも滅入ることなく穏やかに過ごせたました。
育休中の旦那様のサポートはいかがでしたか?
当時の私はとても腰を痛めており、抱っこやお風呂など体力のいる育児は夫が担当してくれました。
それ以外も一生懸命やってくれたので、大きな不満はなかったです。
もちろん狭い家の中でずっと一緒にいると、お互い小さなストレスを感じることはありましたが、一人になる時間を確保しながら、うまく距離を保つことでなんとか解消していました。
奥様の立場として収入が減ることへの不安は感じましたか?
我が家の場合、夫婦共に育児休業給付金が支給されていたため、大きな不安は感じませんでした。
また、当社のポータルサイト上では、育休中の収入シュミレーションができ、事前にどのくらいの給付があるのか確認することができるので、不安の解消に繋がりました。
また、去年(2021年)の9月から新たに育児休業支援金という会社独自の制度が導入され、男女問わず3ヶ月以上育休を取得する人は最大15万円の支援金がもらえます。
社員とその家族にとっては本当にありがたい制度です。
これから出産を迎える方へメッセージをお願いします
出産前は、不安な気持ちでいっぱいだと思いますが、育休は男女共に与えられた権利です。
育児・介護休業法が改正され、令和4年10月1日からは、産後パパ育休が追加され、分割取得もできるようになり、以前よりも柔軟な取得が可能になりました。
女性の出産や復帰のタイミングに合わせて、男性にも積極的に育休を取得して欲しいと思います。
育休というと、”赤ちゃんと過ごすためのお休み”というイメージがありましたが、そうではないことも経験しました。
パートナーに育休をとってもらうことで、家事育児など家庭での役割とその大変さを知ってもらうことができ、話し合うきっかけにもなります。
女性が社会で活躍し続けるためには、パートナーとの役割分担が大切です。
女性のキャリアを守るという意味でも、積極的に育休を活用してもらいたいです。
島村さん、ありがとうございました。
出産後は体力的にも精神的にも疲弊しますが、パートナーのサポートが入ることで、負担が減り穏やかな時間を過ごせますよね。
改めて、出産した女性だけの負担が大きくなってはいけないと感じました。
社員の幸福度と満足度を高めることが企業発展の原動力
最後に、育児休暇取得率100%達成に貢献された、プロジェクトチームの方にお話を伺います。
簑田 美紀さん/内部監査室 執行役員
(ポジティブ・アクションプロジェクト プロジェクトマネージャー)
池内 彩香さん/人事課 主任
(ポジティブ・アクションプロジェクト 男性育休取得推進チーム リーダー)
土居 陽香さん/工務課/関東 主任
(ポジティブ・アクションプロジェクト 男性育休取得推進チーム)
男性育休取得推進の取り組みがはじまった経緯を教えてください
簑田さん:
技研グループでは、社員の幸福度と満足度を高めることが、企業発展の原動力に繋がるという考え方があります。
経営陣と一体となり、課題解決のために女性メンバーで構成された部門横断のポジティブ・アクションプロジェクトが発足しました(現在は男性社員2名がアドバイザーとして関わっている)。
女性活躍を推進させる法律もできて、当社としても推進が重要であるという思いで活動が始まりました。
しかしながら、女性の管理職が少ないという現実があり、まずは女性管理職を育てるということも大事な目標になりました。
女性が活躍できる環境について考えたとき
- 女性も男性も、性別に関係なく、同時に活躍できる環境でないといけない!
- 女性の社会進出には、男性の家庭参画も必要!
という考えから、男性育休取得推進チームが発足しました。
取り組みを進めるにあたり、どのような改革を行ったのでしょうか?
土居さん:
男性育休取得についての理解を深めるために、育休取得対象者とその上司に向けて2019年11月と2022年2月に説明会を実施しました。
説明会では、育休の内容以外にも、社員の人生観・価値観がどれだけ大事かについて伝え、積極的な働きかけを行いました。
結果的に、育休を取得される方はもちろん、上司からの理解も得ることができました。
最初は草の根的に、個人個人に働きかけながらの改革でした。
当社の考え方として、前例主義を打破して新しいもの・良いものはどんどん取り入れると言う根底の価値観があります。
育休取得についても、否定的に捉えるのではなく、社員のワークライフバランス保つために必要であると理解を得られ、大きな変化につながったと感じています。
男性の育休取得に対して否定的な意見をもっている社員はいましたか?
土居さん:
男性の育休取得0人だった時は、そもそも男性が育休をとるという発想自体がありませんでした。
そのため、育児休業を取得することに対して否定的な意見を聞くことは少なかったです。
しかし、対象者には長く休みを取ること、仕事から離れてしまうことへの不安がありました。
男性育休取得推進チームができ、育休の説明をしていくにつれ、必要性を理解してもらえました。
少しずつ、世の中に合わせて変わっていく中で、社員の意識や視点に変化がもたらされたと思います。
御社では仕事内容に男女差があるのでしょうか?
簑田さん:
技研グループでは、仕事内容に男女差、仕分けといった考え方はありません。
弊社では、能力のあるものはどんどん引き上げるという創業者の考えが浸透しておりますので、早くから女性役員(現専務取締役)が誕生し、経営にも参画しています。
また当社は建設機械メーカーで、男性8割、女性2割の会社ですが、技術的な部署にも女性の進出を図りたいと考え配置しています。
実証課に女性が所属し、工事現場で活躍していることもあります。
女性にも積極的に経験を積んでいただくため「製作ガールズ」とあえてチーム名を作り、品質や購買管理等のものづくり最前線で活躍してもらっています。
プロジェクトを成功に導くために一番苦労された点を教えてください
池内さん:
雰囲気の醸成、社員の意識改革が一番苦労しました。
活動開始当時は、
- 給料が減ることへの不安
- 同僚へ負担がかかることへの罪悪感
などの声が多く、そういった考え方を変えるために、取得対象者とその上司を集めて複数回に分けて説明会を開催しました。
さらに技研グループ社員に向けた説明会を行うことで、社内の雰囲気や社員一人ひとりの意識が変わっていきました。
活動開始初年度は6名の社員が育児休暇を取得し、3、4名取得者が出た辺りで、育休に関する話題が会社の中で少しずつ聞こえるようになりました。
「育休を取得するにはどうしたらいいんですか?」という問い合わせが増え嬉しかったです。
お一人目の取得者はとても緊張されたのではないかと想像しますが、実際はどうでしたか?
池内さん:
一人目の取得者は、結果的に9ヵ月という長期取得となりましたが、はじめて会社に相談する時には不安があったと言います。
しかし、産後の奥様のサポートをしたいという想いから、上司に相談したところ、快く後押しをされたため、取得を決意したそうです。
2019年に男性育休チームが発足し、社内で男性育休取得推進活動が開始したことも取得の後押しになったとのことでした。
一人目が長期育休を取得したこともあり、次に取得する者も長期で取得しやすくなったのではないかと考えます。
現在プロジェクトチームとしては、90日の取得を推進しています。
2021年度は、平均で89.2日となる見込みです。
何度も説明会を実施する中でいつ頃「イケそうだな!」と手応えを感じましたか?
池内さん:
育休取得対象者とその上司に行った1回目の説明会から、社員の理解は得られており、育休取得者も増えてきたため、企業として求められている制度だと確信しました。
その中で、全社員に大きく認知・理解されたのは全グループ社員に向けた説明会を実施したタイミングだと感じています。
グループ全体に向けて行った説明会では、プロジェクトマネージャの女性役員から育休のメリットや会社としての推進度合いを伝えました。
トップダウンで育児休業の重要性を伝えたことが、社員に大きな影響を与え、変化に繋がったと感じます。
補助制度を導入されたとのことですが、どういった経緯で導入に至ったのでしょうか?
池内さん:
育休取得推進を始めた当初、全社員向けにアンケートを実施しました。
その結果、社員は「同僚へ負担がかかることへの罪悪感」と「収入面への不安」を感じていることがわかりました。
最初は業務の属人的な問題から改革を行いましたが、やはり収入面への不安にも対処が必要と考え、3ヶ月育休を取得した社員には最大15万円を支給する補助制度の導入に至りました。
補助制度の導入により、育休取得前の給料とほぼ同額を得ることができるため、社員は安心して育休を取得できます。
ありがとうございました。
経営陣の想いを社員がしっかりと受け止め、より良い環境作りのために改革をおこなっていらっしゃる姿に感動しました。
今後も意識改革、発信を止めることなく社員の人生観・価値観を大切にしていきたい
簑田さん:
本当はまだまだお伝えしたいことがたくさんあります。
私たちの活動が広く伝わり、社会全体に影響を与えることができたら嬉しいです。
今回、男性育休取得推進活動が成功したのは、
- トップの発信
- 部門横断のプロジェクト活動
- ロールモデルができたこと
- 下からの声を拾いやすくなっている体制(ボトムアップの部分)
この4つの相乗効果だと感じています。
男性育休は子供のためだけでなく、出産直後の、精神的にも肉体的にも疲弊した女性(妻)をサポートするための制度でもあります。
男性社員にかけがえのない人を守ってもらえるような社風にしていきたいというトップからの発信をうけ、そういった部分も醸成していきたいです。
私たちは3年掛けて100%を達成しましたが、今活動をやめてしまうと元の状態に戻ると思っています。
今後も、意識改革を止めることなく、経営サイド、上司、プロジェクトチーム、それぞれの立場での発信を続けることが大切だと考えます。
弊社では、通達文や社内報を通して、育休の最新情報や実際に育休を取得した社員の体験談を届けています。
今後は育休に限らず、介護休暇など、個人の事情で長期休暇が必要となる場面も出てくるでしょう。
働き方改革を止めることなく、組織として柔軟に対応できるよう、今後もプロジェクトを進めていきます。
取材後記
今回私たちは、主婦の立場(目線)で取材に臨みました。
実際に育休を取得された方、その上司の方など、様々な立場の方の話を伺うにつれ、とても素晴らしい取り組みをされていると感動し、心の中は拍手喝采でした!
出産経験がある女性として、出産後の体力的、精神的な消耗をカバーしてくれるパートナーの存在は何者にも変え難いと感じます。
男性の育休の取得は、子供のためだけではなく大切な人を守るためにあるという社風、社員の人生観、価値観を大切にされているところにも強く感銘をうけました。
女性の活躍推進が叫ばれるようになりましたが、活躍するためには仕事と家庭、育児を両立させやすい環境作りが不可欠です。
男性、女性、どちらかに負担が偏る生活環境では、活躍する前に疲弊してしまうのではないでしょうか?
そうならないためにも、男性が積極的に育児に参加できる環境を整えることが、日本の未来を変えていくことに繋がると感じます。
これから社員の育休取得の改革を考えられている企業様、技研グループの取り組みをぜひ参考にしてみてください。
社会全体で子どもを育てやすい環境を整えていけたら、明るい未来が待っているのではないでしょうか?
インタビューに応じていただいた技研グループの皆様、ありがとうございました。
挿入画像/株式会社技研製作所様提供
企画・文/川口美代
取材/川口美代、高桑のりこ、小沢未央子
編集/高桑のりこ